樹は窓際の1番後ろ
アイツ、1人だけいい席引いて…
あたしの前方では咲と悠生が何やら楽しそうに笑いあっている
さっきの違和感はあたしの勘違いだったのかも
その日の放課後、部活を終えて駅へ向かうとちょうど前を樹が歩いていた
思いっきり後ろから驚かせてやろうかと思ったんだけど、その後ろ姿があまりにも頼りなく見えて、踏み止まる
「おつかれ」
仕方ないな、とため息をついて、静かに隣に並び、声をかける
驚いたように肩を揺らして、作ったような笑顔で振り向くけど、相手があたしだとわかると、途端に気が抜けたようにその笑顔を壊した
「おつかれ」
駅までの道をしばらくお互いに無言で歩く
樹が何も話そうとしないので、あたしから口を開く
「今日さ、てか退院してきてから、悠生なんか変じゃない?」
少しだけ遠回しに言ってみたけど、樹は短く「うん」と返してきただけだった
それでも、返事をしてくるということは肯定に違いないので、また仕方なく続ける