気づけばもう16:00間近で、子供たちは回診があるからとそれぞれの部屋へ戻っていく
「じゃあ、私たちもお開きにしましょうか」
大崎さんにそう言われ、私たちも帰り支度を進める
病院を出ようとロビーを抜けるとき、視界の端に見慣れた背中が映った
「悠生くん…?」
まさか。
確かにここ数日休んではいたけど、樹くんはただの風邪だって言ってたし、週明けには学校に来れるとも言っていた
それに人違いかもしれないし…
普段なら何の戸惑いもなく声を掛けられるのに、場所が場所なだけにいろいろと考えてしまう
「神原さん?出口はこっちよ」
思わずその場に立ち尽くしていると、私を振り返った大崎さんに声を掛けられる
「あ、はいっ」
慌てて返事をして彼女の後ろ姿を追う
自動ドアをくぐる直前、もう一度ロビーを振り返ると、もうそこに彼はいなかった
きっと違う、あれは悠生くんじゃない
そう胸の内で何度も唱えながら、頭の中に渦巻く不安をかき消すように歩みを進めた