「……帰るか」


ぼんやりと車の走り去った方向を見つめたままでいると、おーちゃんが呟くように言った。


「うん」


どちらからともなく手を繋ぎ、わたしたちはマンションの中へと戻った。


「今日の夜、何にする?」

「んー……冷蔵庫の中、何があったっけ……」


思考を巡らせながら、3階へと登る。

ふたり並んでのんびりと廊下を歩き、305室までやってくると、おーちゃんが、鍵を差し込んだ——。


「あ」

「……ん?」


カチャリ、と鍵を回したところで、わたしの声に反応して手を止めたおーちゃん。

それを押しのけて、わたしは先に部屋へと入った。

急いで靴を脱いで、廊下に上がる。

くるりと体を回転させて、ドアの方を向いたところで、すぐに、ガチャ、とドアが開いた。