自分の悪いところに気付けていたら、こんなことにはならなかったはずなのに。


広い部屋の中で、私はそんなことばかりを考えていた。


しかしそれだけではない。

疑問に思うこともあった。


いつから、真宙の私に対する恋愛的な愛情が消えていたのだろう。


真宙との楽しい時間は止まっていたのだろう。


そこまで考えて、ふと思った。


私は、この感覚を知っている。


長年使っていた腕時計が止まっていたのを知ったときの感情と似ている。


「……そうだ、腕時計」


久々に出した声は掠れていた。


壊れてしまった腕時計。

まだ買い直していないし、捨ててもいない。


私は立ち上がって、鍵置きの隣に置いていた壊れた腕時計を手に取る。


真宙にあんなことを思わせてしまったから、修理をしようと思って取っていた。

だけど、もうできない。


きっと、これを見る度に真宙のことを思い出してしまうだろう。


私は腕時計を捨てることにした。


スマホで腕時計の捨て方を調べる。


電池を取り外し、不燃ごみとして出せばいいらしい。


調べた通りに行い、ゴミ袋に入れる。


腕時計と一緒に、思い出も消えてなくなりますようにと願いを込めて。


私の頬に伝った雫は、止まることを知らなかった。