「早紀の彼氏君も同じ大学生だよね?忙しいのは一緒じゃない?」


そう言われてしまうと、返す言葉がない。


「早く彼氏君に謝りなよ?多分、早紀は彼氏君がいないと生きていけないだろうから」
「大袈裟じゃない?」


一人で生きようと思えば、それくらいできるはずだ。


「自分でご飯が作れない人がなにを言ってるのかな?」


結芽の目は笑っていない。

私は言葉に詰まる。


そう言えば、いつの間にか真宙が私の部屋にいることを当たり前だと感じていた。


家事のようなことは、いつも真宙に頼っていて。

自分でやったことなんて、片手で数える程度しかしていない。


結芽が言っていることは、間違っていないのかもしれない。


「真宙とちゃんと、話さないと……」


私の気持ちを一方的に押し付け、真宙を押さえつけていては、同じことを繰り返す。


落ち着いて、真宙と話し合わないと、私たちの関係は変わらない。

いや、私が変わらないと、なにも変わらない。


「……早紀、本気で彼氏君のこと、好き?」


結芽の質問の意図がわからなくて、私は首を捻る。


「彼氏君が便利だから手離したくないわけじゃないよね?」
「違う」


好きという気持ちがどういうものかなんてはっきり言えないが、真宙が使えるから一緒にいるわけではないことはわかっている。


「……真宙がいない部屋は、広くて寒かった。私は、真宙に家事をしてほしいわけじゃない。ただ、そばにいてほしい」


そう答えると、結芽は満足そうに笑う。


「行ってらっしゃい」
「うん」


結芽に見送られて、真宙を探す。


だけど、真宙を見つけることはできなかった。


真宙は、私の前から姿を消したのだった。