そして、アンドレアスとザリロッド王国の貴族達のやりとりもあった。彼らは、アンドレアスをザリロッド王国に迎えたいらしい。
 ロニーは、アンドレアスの寝室に潜り込んでこれらの写しを作ったのだそうだ。

「……やはり、ハルディール夫人は、国に戻りたいと思っているようね。アンドレアス殿下は、そこに協力している、というわけかしら」

 幽閉されているハルディール夫人は、国に戻ることを願っていた。
だが、国に戻って彼女の居場所はあるのだろうか。もちろん、そこはレオンティーナが気にすべきところではないのだが。

「これは、ヴィルヘルム様にもお見せしましょう。本当に、ありがとう。ロニー」
「いえ、たいしたことじゃねぇです。お嬢さんに命を助けてもらったの、忘れてないんで」

 ねぎらうレオンティーナの言葉に、ロニーは照れくさそうな顔を見せた。
 

 翌日、ヴィルヘルムに会いに行くと、彼もアンドレアスが戻ってきたことに疑問を覚えているようだった。
 ヴィルヘルムの私室でふたり、向かい合って座っている。今までも、いくどもこうしてきたはずなのに、そわそわと落ち着かない気分になる。