今日は、その話をするためにここに来たのだ。

「ロニーからの報告なのですが、アンドレアス殿下は、国境を越えてやってきた人間としばしば語り合っていたそうです」
「それは別に珍しい話ではないだろう。俺も、ターナジアにいた頃はやった。川を渡っただけで、ずいぶん生活習慣が変わるものだと驚かされたよ。作物や日用品の売買もあるだろうし」
「いえ、そうではないんです。庶民の服を着慣れていなかったり、言葉遣いが庶民のものとは異なっていたりする者もいたそうです。ザリロッド王国の貴族ではないかとロニーは推測していました」

 変装していても、貴族が庶民のふりをしているのは、ロニーにはすぐにわかるようだ。庶民の服を着慣れていない様子、言葉遣い、肌の色つや。そういったもので自然とにじみ出てくるそうだ。
 貴族の言葉と庶民の使う言葉が違うというのは、レオンティーナも知っている。
前世で、ソニアからいくつか庶民の言葉を教えてもらったが、聞かされても説明されるまで意味はわからなかった。
レオンティーナの言葉に、ヴィルヘルムも考えこむ表情になった。

「だからアンドレアスを呼び戻すのは危険だと君は思う?」