「そうじゃなくて。あいつもうまいこと言うと思っただけだ。面白くないなと思ったのは、俺が……たぶん、心が狭いからなんだろうな」
「そんなこと、ないと思いますけど」

 ヴィルヘルムの見せる独占欲が、レオンティーナにはくすぐったい。

「そうそう、アンドレアスが一度皇都に戻ってくるそうだ」
「……もう、ですか?」

 レオンティーナは、眉をひそめた。
 アンドレアスが、皇都に戻ってくるなんて、あまりにも早い気がする。皇帝の誕生祝にさえ、出席を許されなかったのに。
 レオンティーナの表情に気付いたのか、ヴィルヘルムは慌てた様子で付け足した。

「父上は罪を許したわけじゃない。皇宮に戻ってくるのではなく――グラナック博士を皇都に送り届けるのと、先日の戦の報告だそうだ」
「……そうですか」

 皇帝の判断に、レオンティーナが口を挟めるところではないが、罪を犯したのは前皇妃でありアンドレアスではないと言われたらそれもそうだとしか返すしかない。

(あ、でも……)

 ロニーから送られてきた報告書。あの中に、アンドレアスがザリロッド王国の者と関わりを持っているというような話があった。