その宣言は、一瞬レオンティーナには理解できなかった。ゆっくり二度、瞬きをし、言葉を頭の奥に吸い込ませる。

「宰相……ですか?」
「うん。今まで自分はたいした資質もないし、正しい血筋の皇子と、最も寵愛された女性の産んだ皇子が上にいただろう。どうせ、僕が皇帝となることはない――だから、好きなことをして暮らそうと思っていた」
「でも、歴史の研究に関しては、素晴らしい業績をあげていらっしゃいますよね?」

 ギルベルトは学者を目指していたらしい。彼の知識は、専門家にも引けを取らないものだった。

「まあね。でも、そんなの国を治める上では役に立たないだろう。皇帝一族のお荷物――そう思っていたんだ。いずれ機会があれば、適当なところに婿入りするか妻を迎えるか。駒としての役割くらいは果たそうと思っていたんだ」

 そのギルベルトの告白は、初めて耳にするものだった。ギルベルトが、そんな風に考えているなんて、知る機会がなかったのだ。