なにより変わったのは、そのまなざし。宮中で顔を合わせていた頃は、どこか自信なさげな光を浮かべていた。だが、落ち着いてレオンティーナを正面から見つめている。
 口元に浮かぶのはゆったりとした微笑み。一足飛びに大人になったようだ。

「……いえ。急にお越しになったので……皇宮で何か問題が発生したのかと」
「――ごめん!」

 レオンティーナの前で、ギルベルトは深々と頭を下げた。

「先に用件を伝えておけばよかったね。君に渡したいものがあったんだ。父上に申し上げたら、すぐに渡すようにとおっしゃったから」

 ギルベルトがレオンティーナに差し出したのは、小さな鉢植えだった。白く、可愛らしい花が咲いている。

「これは?」
「ヘイルダート王国の兵士達が、傷口の治療に使っていた薬草なんだ。ええと……クラリサと言ったかな? 少し、君に似ていると思って」
「……私に?」

 レオンティーナは鉢植えをまじまじと見た。一本の茎にいくつも小さな花が咲いている。形は鈴蘭に似ているだろうか。
 とても清楚で可憐な花。ギルベルトの目には、レオンティーナはこう見えているのだろうか。