「どうするのって……」
「お兄様のこと。お兄様はあなたが好きだわ。あなたもそうよね……では、なぜ、先に進まないの」
「……私は」

 この先に進むのが怖いと言ったら、ルイーザは笑うだろうか。
 ここまで夢中でやってきた。ヴィルヘルムのことは愛している。けれど、そこから先に踏み出すことができないのはなんでだろう。
 ルイーザの言葉に返すことができず、レオンティーナは黙り込んでしまった。

「私がいなくなったあと、お兄様のことをお願いしてもいい? あなたが側で見ていてくれたら、お兄様きっと張り切ると思うの」
「張り切り過ぎはよくないと思うのですが」
「いいのよ。そのくらいしないと……お兄様、遠慮しちゃうから」

 そう――と、ルイーザの言葉にうなずいた。
 ヴィルヘルムは貪欲な人間ではない。アンドレアスが皇太子の地位を狙って暗躍していた時も、彼は自分から動こうとはしなかった。
 アンドレアスが皇太子になったら、きっと彼を支え、皇帝となったあとも、彼を支えたことだろう

 それは、今でも変わりないのかもしれなかった。

「お約束します。ヴィルヘルム様をお支えします」