「石は自分より柔いものでは削られませんね。よしんば削られたとしても、長い年月が必要です。殿下は今のクロエをどう思います? エネルギーの行き場がなく、結婚はしたくないけれどどうしたらいいのか分からないと腐っていた、俺や両親が手をかけて磨いたクロエではもうありません。この一年で、あの子の角を削り、輝く宝石にしたのは、誰だと思います?」
バイロンは言葉が出なかった。
それは自分だと、うぬぼれではなく思う。
彼女が望みどおりに生きれる道をと願って、誘導していった自覚はあるのだ。
「誰にでも削られるような妹ではありません。少なくとも、コンラッド様では力不足ですよ」
「おまえも容赦がないな」
「逆に言えば、バイロン様にはクロエの角を削り、磨く力があったということです。あの子はあなたに気持ちを伝えたことを、今後悔しています。信頼に背く行為をしてしまったのではないか、とね。……あなたが妹を得る気がないならそれでも構いませんが、あの子の決死の告白をなかったことにするのだけはやめていただきたい。そういうところが、気に入らないんですよ俺は」
ケネスの目には、怒りが宿っている。
そうか、決死か。と不意にバイロンは思った。
クロエは強い令嬢だ。王族だからと怯むことなく、不遜とも思える勢いで自分の意見を言う。
だが、その実、とても臆病なところがあるのだったと思い出した。
「そうだな。悪かった。だがおまえも先ほどのアイザックとの話を聞いていただろう。私の体が完全な健康体に戻ることはない。体内にはいまだ毒が残っている。そんな私と結婚して、障害がある子供が生まれでもしてみろ、彼女を不幸にすることしかできないだろう」
バイロンは言葉が出なかった。
それは自分だと、うぬぼれではなく思う。
彼女が望みどおりに生きれる道をと願って、誘導していった自覚はあるのだ。
「誰にでも削られるような妹ではありません。少なくとも、コンラッド様では力不足ですよ」
「おまえも容赦がないな」
「逆に言えば、バイロン様にはクロエの角を削り、磨く力があったということです。あの子はあなたに気持ちを伝えたことを、今後悔しています。信頼に背く行為をしてしまったのではないか、とね。……あなたが妹を得る気がないならそれでも構いませんが、あの子の決死の告白をなかったことにするのだけはやめていただきたい。そういうところが、気に入らないんですよ俺は」
ケネスの目には、怒りが宿っている。
そうか、決死か。と不意にバイロンは思った。
クロエは強い令嬢だ。王族だからと怯むことなく、不遜とも思える勢いで自分の意見を言う。
だが、その実、とても臆病なところがあるのだったと思い出した。
「そうだな。悪かった。だがおまえも先ほどのアイザックとの話を聞いていただろう。私の体が完全な健康体に戻ることはない。体内にはいまだ毒が残っている。そんな私と結婚して、障害がある子供が生まれでもしてみろ、彼女を不幸にすることしかできないだろう」