コンラッドも悪い人間ではないのだが、まだ考えが幼い。癇癪を抑えられないところもあるし、望みに対してただ自分の意志だけをぶつけようとするところは子供のようだ。
コンラッドの教育係として、誰かひとり送り込んだ方がいいのかもしれない。

バイロンの謝罪に、ケネスは頷いて受け容れながらも、怒りの感情をあらわにはしていた。

「俺が気に入らないのは、いつかクロエの気持ちを変えられると彼が信じていることですよね。厚かましい。あの子は俺や両親が大切に育てた大事な妹です。あの程度の男にはやれませんよ」

「手厳しいな」

バイロンは苦笑した。
そして思う。彼女は守られている。家族にこんなに愛されているのだ。今少しばかり気の迷いで傷ついていたとしても、きっと立ち直ることができるだろう。

「バイロン様」

ケネスがいつになく真剣な声を出した。

「クロエに、宝石の話をしたでしょう」

「何の話だ?」

「人は原石だという話です。生きているうちに磨かれて宝石になるのだろうと。磨かれ方は人生によって決まる、とね」

言われて思い出した。まだクロエと話すようになったばかりの頃に、たしかにそんな話をした。

「ああ。言った……が、もう一年以上前の話だぞ?」

「感慨深いお言葉だったようですよ。クロエにとってはね」

「そうか」

他愛もない話だと思うが、それをケネスに話すくらいには印象深かったのだろうか。

「ですがね、殿下、俺は思うのです」

ケネスは足もとから小石を拾い上げ、指で軽く撫でて見せた。