執務室に戻ると、コンラッドだけでなくバイロンの姿もなかった。同じ補佐官であるジャンが、クロエを見つけて、駆け寄ってくる。
「大丈夫かい? クロエさん」
「ええ。すみません。勝手に抜けてしまって」
「気にすることはないよ。それにしても、コンラッド様はまだ君をあきらめてないんだなぁ」
どうやら、コンラッドがクロエに懸想している話は、城にいる者の中では有名らしい。
「ジャンさんも私がおかしいと思いますか? 傍目から見れば、コンラッド様は悪い縁談相手ではないでしょうから」
「ああ、そこは客観的に分かってるんだね。うん。まあ、……例えば君が俺の妹だというなら、結婚したほうがいいと言うかもしれないね。でも、クロエさんだともったいないと思うかな。殿下の信頼も厚く、学術院を卒業していないとは思えないほど博識だ」
「それは、……殿下が学ばせてくださったからだわ」
学術院の附属病院に行くとき、バイロンは必ずクロエを同行させた。
そして帰りに、必ず図書館に寄るのだ。
自分が調べるものがあるのだ、と言っていたけれど、その都度本を選んでくれたことを思えば、あれはクロエの勉強のためだったのだろうと思う。系統だてて渡された本は、着実にクロエの知識を深めてくれた。
「大丈夫かい? クロエさん」
「ええ。すみません。勝手に抜けてしまって」
「気にすることはないよ。それにしても、コンラッド様はまだ君をあきらめてないんだなぁ」
どうやら、コンラッドがクロエに懸想している話は、城にいる者の中では有名らしい。
「ジャンさんも私がおかしいと思いますか? 傍目から見れば、コンラッド様は悪い縁談相手ではないでしょうから」
「ああ、そこは客観的に分かってるんだね。うん。まあ、……例えば君が俺の妹だというなら、結婚したほうがいいと言うかもしれないね。でも、クロエさんだともったいないと思うかな。殿下の信頼も厚く、学術院を卒業していないとは思えないほど博識だ」
「それは、……殿下が学ばせてくださったからだわ」
学術院の附属病院に行くとき、バイロンは必ずクロエを同行させた。
そして帰りに、必ず図書館に寄るのだ。
自分が調べるものがあるのだ、と言っていたけれど、その都度本を選んでくれたことを思えば、あれはクロエの勉強のためだったのだろうと思う。系統だてて渡された本は、着実にクロエの知識を深めてくれた。