クロエが男に怯えているなんて、おそらく他の誰も気づいていない。両親やケネスでさえ、だ。
「どうしてわかったんですか」
「さあな。自分で思っているより、君は分かりやすいのではないか? とにかく、それを糾弾したいわけではないのだ。結婚したくないならしなければいいと私は思う。ただ、その場合、仕事をした方がいいという提案をしたいだけだ。親にも認めさせてな」
そこでようやく話の流れが分かった。
バイロンはクロエの気持ちを理解したうえで、今後を生きるための提案をしてくれているのだ。
洗いざらい両親に話し、結婚しないで生きる道を歩ませてほしいと願えと。
「でも、そんなことを言ったら母が……」
「では誰かと結婚するのか? 君がそんな泣きそうな顔をしているほうが、伯爵夫妻にもケネスにも辛いのではないのか」
分かっている。年齢的に、八方ふさがりなところまで来ているのだ。
これまでは、結婚しないと言っても、令嬢のわがままで済んだ。
でも、二十歳を超えたらもう無理だろう。
きっと母は泣く。父は自身の伝手を頼って、クロエが気に入るような紳士を次から次へと探してくるだろう。いつまでも断り続けることはできない。
だからといって、仕事がしたいと言えば?
令嬢が主に行う行儀見習いの仕事だって、二十歳を過ぎればやらない。それ以降は本格的に職業婦人とみなされる。そしてそうなることは、貴族社会では恥ずべきことだと教わってきた。
クロエ自身は良くても、歴史ある伯爵家の立場がない。
「どうしてわかったんですか」
「さあな。自分で思っているより、君は分かりやすいのではないか? とにかく、それを糾弾したいわけではないのだ。結婚したくないならしなければいいと私は思う。ただ、その場合、仕事をした方がいいという提案をしたいだけだ。親にも認めさせてな」
そこでようやく話の流れが分かった。
バイロンはクロエの気持ちを理解したうえで、今後を生きるための提案をしてくれているのだ。
洗いざらい両親に話し、結婚しないで生きる道を歩ませてほしいと願えと。
「でも、そんなことを言ったら母が……」
「では誰かと結婚するのか? 君がそんな泣きそうな顔をしているほうが、伯爵夫妻にもケネスにも辛いのではないのか」
分かっている。年齢的に、八方ふさがりなところまで来ているのだ。
これまでは、結婚しないと言っても、令嬢のわがままで済んだ。
でも、二十歳を超えたらもう無理だろう。
きっと母は泣く。父は自身の伝手を頼って、クロエが気に入るような紳士を次から次へと探してくるだろう。いつまでも断り続けることはできない。
だからといって、仕事がしたいと言えば?
令嬢が主に行う行儀見習いの仕事だって、二十歳を過ぎればやらない。それ以降は本格的に職業婦人とみなされる。そしてそうなることは、貴族社会では恥ずべきことだと教わってきた。
クロエ自身は良くても、歴史ある伯爵家の立場がない。