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クロエは次にロザリーに会いに行くときに、バイロンにも面会願を出した。
彼は、クロエとロザリーのお茶会が一時間ほど経過したころに顔を出し、前回の本の感想をクロエから聞き、またお勧めの書名を伝えては帰って行く。
そんなことを何度も続けているうちに、話は本の内容だけにとどまらなくなった。
「現在、貴族夫人のたしなみとして行われている孤児院の援助ですけれど、これを国家事業として整備するつもりはないんですか?」
「ふむ?」
クロエとバイロンの会話が白熱していくのはいつものことなので、ロザリーはお茶を飲みながら遠巻きにふたりを見つめている。
「平民議員も多くなってきている今、平民にも有用な人材が多くいることは分かっておられると思います。人を育てるにはやはり教育でしょう? 今の孤児院には、学校に行かない子供も多いと聞きます。その子たちが等しく教育を受けられたら、突出した才能のある人間が現れるかもしれませんし、そこまで行かなくとも、物乞いでしか生きていけないような人間は減るでしょう。孤児院の采配が、領地を治める貴族の財力に左右されているという現状はあまりよくないのではないでしょうか」
「まあね。それは私も教育改革の中で提案したことはある。議会では『親のない平民に金をかけても、なにも戻ってこない』と反対意見が多数だったがな」
「そうかしら。長い目で見れば、彼らを一般市民として独り立ちさせた方が税収は上がるでしょうに。それに自領に多くの有用な人材がいれば、領地は栄えますよね。農家だって、働き手が多ければ収穫量が増えますし」
「そうだね。だが、目先のことで頭がいっぱいの人間が多いんだ。彼らを納得させるにはどうしたらいいと思う?」
クロエは次にロザリーに会いに行くときに、バイロンにも面会願を出した。
彼は、クロエとロザリーのお茶会が一時間ほど経過したころに顔を出し、前回の本の感想をクロエから聞き、またお勧めの書名を伝えては帰って行く。
そんなことを何度も続けているうちに、話は本の内容だけにとどまらなくなった。
「現在、貴族夫人のたしなみとして行われている孤児院の援助ですけれど、これを国家事業として整備するつもりはないんですか?」
「ふむ?」
クロエとバイロンの会話が白熱していくのはいつものことなので、ロザリーはお茶を飲みながら遠巻きにふたりを見つめている。
「平民議員も多くなってきている今、平民にも有用な人材が多くいることは分かっておられると思います。人を育てるにはやはり教育でしょう? 今の孤児院には、学校に行かない子供も多いと聞きます。その子たちが等しく教育を受けられたら、突出した才能のある人間が現れるかもしれませんし、そこまで行かなくとも、物乞いでしか生きていけないような人間は減るでしょう。孤児院の采配が、領地を治める貴族の財力に左右されているという現状はあまりよくないのではないでしょうか」
「まあね。それは私も教育改革の中で提案したことはある。議会では『親のない平民に金をかけても、なにも戻ってこない』と反対意見が多数だったがな」
「そうかしら。長い目で見れば、彼らを一般市民として独り立ちさせた方が税収は上がるでしょうに。それに自領に多くの有用な人材がいれば、領地は栄えますよね。農家だって、働き手が多ければ収穫量が増えますし」
「そうだね。だが、目先のことで頭がいっぱいの人間が多いんだ。彼らを納得させるにはどうしたらいいと思う?」