私を傷つけようとしているのはあなた。けれどそのあなたの方が傷ついた顔をするのは、何故?
私の体をまさぐっていた指はぴたりと動きを止めた。

「じゃあ、何故あの海で」

歯切れ悪くそう言った朔夜さんが、初めて目を逸らした。

「前の男に貯金していたお金を持ち逃げされたのは引き金に過ぎません。
私はもっともっとずっと前から自分の人生に失望していた。」

私はどうして、自分の秘密をこの人に話そうとしたのだろうか。 どうかしていたとしか思えない。

今日は夢のような一日を過ごした。

優しい智樹さんに美容室に連れて行って貰って、綺麗なメイクを施してもらい美しいワンピースに身を纏って

シンデレラにでもなったつもりだったのだろうか。 シンデレラは清廉潔白で綺麗な身体を持っていたからこそ、王子様に見初められたのだ。

汚れた自分がどうしてシンデレラになれると思っていたのか。

「母はこの館を飛び出した後もちっとも幸せそうではありませんでした。
義理父と再婚した後も働きっぱなしで生活は困窮するばかり。 私にも興味を示す事は記憶にはなかった。
義理父になった人はろくでもない人でした。
中学生の頃でした。 義理父に強姦されました。」