「何故抵抗をしない」

「好きにして構いません」

「お前は馬鹿か?そんなんだから馬鹿な男に引っかかって破滅する道ばかり。」

この人は私の過去の事情の大半は知っているだろう。けれど私の秘密は知らない。
たとえここで彼に乱暴をされようと、私の気持ちは全く揺れない。傷ついたりもしない。

「朔夜さん達は私の事を調べたと思いますが…それは私の人生のほんの一部です。」

やっと朔夜さんの瞳を見つめる事が出来た。どう見ても襲われてるのは私の方なのに、朔夜さんの方がずっと苦しそうな顔をしている。

何だか笑える。

「付き合ってたとは言っても、彼は私以外の女性が沢山居たのも知ってるし、お金の為に利用されていたの位分かっていますよ」

「そんな馬鹿な男の為に命を投げ出そうとする事が馬鹿馬鹿しいつってんだよ」

「別にあの男の為に命を投げ出そうとした訳ではありません。
私の人生、あなた達が思っている以上に汚いって事です。
だって中学を卒業してからずっと自分の力で生きて行かなきゃいけなかったんですもん。
人には言えないような事もしてきましたよ。
ほら、今でいうパパ活って奴ですか? 別にお金で男と寝る位私にとっては何でもない事なんですよ。
だからここで朔夜さんが私に乱暴を働こうと、あなたには私を傷つけられない」