ソファーに手を掛けてこちらを向いた朔夜さんは軽薄な笑みを浮かべる。
二人に挟まれて、悠人さんだけがオロオロとしていた。

「ちょっと、ちょっと、朔夜も智樹さんもまりあの前で止めなよぉ。
せっかくの孫との再会なんだからさぁーッこんな日位喧嘩は駄目だってぇー」

末っ子にあたる悠人さんは見た目通り軽口で、けれど人懐っこさは誰よりもあり
兄弟間でも友好関係を築けているかとは思う。

けれど朔夜さんと智樹さんは別だ。 この二人の間には、目には見えない壁が存在する。

「そうだよなぁ?その女はそうやってきちっとしてればあゆなさんによく似ているしなぁ?」

私に視線を移す朔夜さんの不思議な色の瞳。軽薄に笑ってはいるのに、どこか笑っていない。

「何が言いたい」

「そうやってこいつをあゆなさんのように仕立て上げてじいさんに会わせて
全部あんたの計算通りって奴か?それで満足か?
何をしてでも横屋敷の家を手に入れたいか?」

朔夜さんを見下ろす智樹さんの瞳はとても冷たい。心の底まで冷え切ってしまいそうな冷たさを孕んでいる。

私には決して見せないその冷たさは、もしかしたら彼の本質だったのかもしれない。
薄い唇が、少しだけ震えていた。