この館にはテレビがリビングにしかない。

テレビからは騒々しい声が漏れていて、音の余りない横屋敷家で唯一普通と思われる場所がリビングだ。

とはいっても高級そうな絵画があったり、外国でしか見ないような暖炉もあり、大きなテレビはその部屋では若干浮いていた。

朔夜さんはチラッと私を見た後直ぐにテレビへと目を向けてしまった。

「悠人さん、大学は?」

「明日は土曜日だから休み~ッ。まあロクに行っちゃいないんだけど!」

スーツの上着を脱いだ智樹さんは軽く悠人さんの頭を小突く。

「自慢して言う事じゃないだろう」

血は繋がっていないらしいが、こうやって見ると本当の兄弟に見える。

当たり前か、小さい時からこの家で生活を共にしてきたんだ。 私と祖父の方がよっぽど歪な関係ではある。

そこに情があるのならば、血の繋がり等察して問題ではないのかもしれない。

「まりあをじいさんに会わせたのか?」

朔夜さんはテレビを見たまま言った。

「ああ、まあな」

「そりゃあ喜んだだろう。大分弱ってきて涙腺も弱くなっている頃だ」

「朔夜、そんな言い方は止めろ」

「何をいい子ちゃんぶっている。まりあをじいさんに会わせたのは、全部自分の為だろう?」