「や、違くて。横屋敷グループが欲しいとか遺産がどうとかって話ではないんです。
ただただ単純に…この世界で自分と血の繋がる人はあの人しかいないって思ったら
やっぱりきちんと話だけはしたい。もしも分かり合えないとしても、理解をする努力はしたい、と思ったんです…」

「そうだね」と、ふわり智樹さんは優しく微笑んだ。その笑顔を見て、緊張の糸がやっと解れた気がする。
だから次に彼が言った言葉には驚いた。

「まりあが笑ったの、初めて見た気がする」

「え?」

指摘されるまで、自分が笑っていた事にさえ気が付かなかった。

「まりあは笑っている方が可愛いよ」

映画のような台詞を智樹さんはさらりと言ってのける。だからまた心臓は忙しなく動いていく。
親切にしてくれるのは、私が横屋敷の人間であるからだ。その笑顔に言葉に勘違いはしたくない。

愛されたいと思っていた。誰かの曇りなき愛情を欲しがっていた。裏切られ続けた人生の中で、それでもまだこの世界に愛があるという事を信じたかった。

―――――

「まりあ~ッ!
超可愛いじゃあん!」

横屋敷の家に戻ると、珍しく朔夜さんと悠人さんが揃ってリビングのソファーで寛いでいた。
二人とも私の変貌ぶりに驚き、悠人さんはぎゅっと抱き着いて来た。