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「厳格な父親だと言っていたよ」
帰りの車内で独り言のように智樹さんが喋り出した。
「あゆなさんとまりあの父親の事を許していたら、と何度も後悔していた。
これだけ大きな企業のトップに立つ人で、昔から俺達兄弟にもとても厳しい人だった。
でも寂しい人なんだとも思う。」
「私は…あまりあの人を祖父だという実感がなくて…
何て言葉を掛けていいか分かりませんでした」
「まりあが気に病む事じゃあないよ。誰だってそうだ。今まで存在だって知らなかった人間をいきなり家族だと思うのは無理があるだろう。
それでもあの人なりに娘のあゆなさんを愛していた。
そして孫である君はただひたすら可愛い。ただただ単純な気持ちだよ」
「あの…」
「ん?」
「また、祖父に会いに行ってもいいですか?
私…自分の気持ちはあんまり上手に伝えられるタイプではないんですが…
それでも話はしてみたいと思う。祖父が見て来た、母の事も知りたいと思う」
その言葉に智樹さんは意外そうな顔をした。