「お肌つっるつるだねぇ」
「そうですか?」
「うん。若いっていいなぁーって感じだよ。
こんなに綺麗な肌ならファンデーションは薄付きで充分だ。
けれどお肌のメンテナンスはきちんとした方がいいよ。若いうちからやっておくと、歳を取っても綺麗なままでいられるからねぇ」
「はぁ…」
人にこんな風にメイクをしてもらった事は初めてだった。
綺麗に伸びた指は、器用に動く。人に触れられるのは得意ではない方だが、その指は魔法のように気持ちが良かった。
そうしてヘアメイクが全て終わった後、鏡に映ったのは自分だけど自分ではないように見えた。
「え?!」
思わず間抜けな声を上げてしまう。 鏡越し、店長はにこりと微笑んだ。
「すっぴんでもあれだけ綺麗な子だと思ったけれど、やっぱり化粧をすると映えるね。
それに髪型もよく似合っている。
んー本当に綺麗だ」
彼は満足そうに言った。 けれどびっくりしているのは自分自身で、鏡の中の自分は誰かに似ていると思った。
それは、幼き頃に美しいと思っていた母の姿だ。 私はずっと母には似ていないと思っていた。周りにもそう言われ続けた。 けれど鏡に映る自分はまるで母の生き写しのようだった。