「髪がすっごく傷んでるね」

「そういえばずっと美容室とか行っていなかったかもしれません」

記憶は定かではない。

けれどもヒモ同然の男と暮らしてきた私は日々生きるのだけが精いっぱいで、お洒落に時間を掛ける余裕もなかった。

「髪の長さはあまり変えないで、傷んでいる所だけ切ろう。
カラーはどんな感じがいい?」

「いや、それはお任せします。
と、いうか全部お任せで…」

ロングだろうがショートだろうが、茶色でも金髪でも何でも良かった。

智樹さんは自分の買い物に付き合ってくれと言ったのに、何故美容室に来て呑気に髪を切られているのか状況も理解出来ない。

そんな事を言ってしまえば、ここ数日の出来事だって未だに理解は追い付いていない。


髪を切られ、カラーをされてシャンプーをする。

うちに新しく入った最新技術のトリートメントなんだ、といちいち説明されたが「はぁ…」としか言いようがなかった。

つまりはされるがまま。 そのまま全ての工程が終えたかと思えば、店長は私の顔にメイクをし始めた。