私の新しい席は窓際で、隣の芹沢と反対側はベランダなため、必然的に芹沢に教科書を見せてもらうしか他ならない。 芹沢に頭を下げるか迷っていると、芹沢は目線だけこちらを見た。 「ん」 「え?」 芹沢は机をこちら側に寄せてきて、数学の教科書の左半分を私の机に載せた。 「教科書。忘れたんだろ?9日だから島田から縦で当たると思うぞ」 「……ありがとう」 高校に入学してから、たぶん初めて話したけど、芹沢は案外普通だった。