おふくろに封筒を手渡し、中身を見た瞬間、おふくろは肩を震わせていた。




この時俺は初めておふくろの涙を見た。




おふくろの涙が、俺には喜んで泣いているようには見えなかった。






俺はすぐに涙の理由が分かり、後悔した。
 

高校生の俺が普通にバイトをして稼げる金額ではない。


おふくろは俺が借金のために何か危ない仕事でもしているのではないかと思ったに違いなかった。
 

だからと言って、今ホストをやっているとは言えなかった。
 

正直に言えば良かったのかもしれないが、未成年でまして高校に通っている俺が、退学の危険を侵して働いているなんて、おふくろを悲しませるような気がして言えなかった。


俺が高校に入学したのをおふくろは誰よりも喜んでいた。
 






言えるわけがなかった。








何か適当な言い訳を考えようと頭を働かせたが、おふくろの涙を見てしまい何も考えらなかった。
 


何も言えずにいるとおふくろは俺に一言だけ言った。









「智也……ごめんね……ごめんね……」






謝りながら封筒を握り締めていた。