だが、その弱点を救ってくれたのは拓真だった。


拓真の顔についてはなんとも言えなかったが、拓真は人を笑わせることだけには長けていた。

いつもテンションが高く、飲みっぷりも良い拓真

口下手な俺はいつも拓真に助けられていた。

俺と拓真は一緒に席に着くことが多く、見映えが良い俺は観賞用として、しゃべりが上手い拓真は盛り上げ役として上手くバランスが取れていた。

入店三週間目になると、俺目当てでお店に通ってくるお客も増え、しゃべることが俺にとって一番の弱点だったが、しゃべるだけが接客ではないと、客数が増えるにつれて分かり始めていた。


そして店の常連だった今でも付き合いのあるエリコさんとの出会いが俺をナンバーワンへと導いてくれた。


「かわい~♪ まだ新人なんだぁ。あたしが教育してあげる♪」


まだ新人だった俺をエリコさんは一目で気に入り、俺に惜しみなく金を使った。

その当時のエリコさんは三十歳だったが、すでに独立して経営者として働いている人で、無類のホスト好きだった。


入店したばかりの俺は、当たり前に顧客も何人もいなかったが、エリコさんが俺に使う金額は半端なく、細い客が五十人いても太刀打ちできないくらい、エリコさんの使う額は郡を抜いていた。


「あたしが指名するホストはナンバーワンじゃないと嫌なの。あたしはいつも1番が好きなの」
 

そういってエリコさんは狂ったように高い酒ばかり注文していた。