「拓真はかっこいいよ」

「なんかお前に言われると無性にムカつくわ~」

本心で言ったつもりが、拓真には通じてなかったようだ。

「ところでさ、お前本当に彼女いんの?学校終わるといつも飛んでいくように帰っていくよな。放課後お前の姿見たこと1度もねーよ」

拓真には親父のことはもちろん、借金のことは言ってはいなかった。

俺が生活費と借金を返すために夜遅くまで建築現場で働いてるなんて、拓真には想像もつかないだろう。

隠すつもりはなかったが、拓真には言うつもりはなかった。

というより誰にも言うつもりはない。

言ったところでどうにかなる問題でもないし、無駄な同情もいらない。

俺は可哀想な奴でも、無理をしているわけでもない。

ただ自分の意志でしたいようにしているだけだ。