「だよなあ。本当は俺もう学校辞めようかと思ってたんだよ。留年しちまってクラスにも馴染めねーし、俺の仲間はとっくに退学して学校辞めちまったし、もうくんのやめよーかと思ったけどお前がいてよかったよ。お前も俺がいてよかっただろ?」

拓真に突然そう言われ、俺は失礼だと思ったが吹き出して笑ってしまった。

拓真は世間一般的には不良と呼ばれる人種だったが、本当は淋しがり屋の優しい奴だった。イカツイ大きい体を武器にして威嚇してみたり、悪ぶって見せたりしていたが、それも全て拓真の淋しさからきていたようだ。

「なに笑ってんだよ」

「ごめんごめん、拓真って見た目で損してるよな」

「お前にだけは見た目の話されたくねーよ。そーいえばお前のこと女子が噂してたぜ。智也君、学校が終われば急いで帰って行くけど、彼女いるのかなぁって。キャーキャー言ってたの聞いたぜ」

「拓真って耳は良いんだな」

「耳はってなんだよ? 確かにお前には顔では負けるよ。悔しいけど認めてやるよ。だけどなぁ、お前は知らないと思うけど普通のダッセー高校生に比べたら俺はイケてる方なんだぜ?」

大人顔負けのイカツイ体でヒゲも生やし、どう見たって未青年には見えない拓真。

俺と拓真は見た目も性格も正反対だった。

俺がジャニーズ系と言われるとしたら、拓真はワイルド系だろうか。

人間は無い者ねだりの生き物だ。

俺は拓真のワイルドで大胆そうな俺にはない見た目や雰囲気を羨ましく感じていた。