拓真が帰ってすぐに俺は携帯を取りだし、オーナーに電話を掛けた。

オーナーに連絡する気なんて更々なかったが、これ以上拓真に迷惑は掛けられない。

『すみません、連絡もしないで』

『智也……!何やってんだよ!?今どこにいるんだ!?』

オーナーの声は耳が痛くなりそうな位、俺の鼓膜に響いていた。

『俺……オーナーに前も言いましたけど、もうホストやる気ないです。店に戻る気はもうないです。辞めさせて下さい』

『……本気なのか?』

『はい』

『いくら説得しても無駄なようだな……』

『……』

『正直、智也がいなくなって売り上げは落ちるし、客は来ないし、散々だよ』

『……』

『本当に辞めるのか?』

『はい』

『……迷惑掛けてすみません』

『……智也、いつでも戻ってこいよ。智也がいつ戻って来ても俺は大歓迎だぞ』

『……はい』
 







もう俺がホストに戻ることはないだろう。

もうホストでの恋愛ごっこはおしまいだ。
 
俺は今、別れさせ屋工作員として依頼人の為に、依頼人の家族を守るために、恋愛ごっこをしている。
 

この恋愛ごっこには意味があるんだ。

 










……意味があると思いたい。

 






俺はこんな風にしか生きられない。