「ところでお前ホスト辞めて今何やってんの?プーか?」

「いや……」
 
拓真に今別れさせ屋で働いているということを言ってしまおうかと思ったが、説明するのも面倒くさく

「無職」

と答えておいた。

「拓真……お前、奥さんと上手くいってるか?」

「は?なんだよ、急に。相変わらずだよ。毎日俺の世話と子どもの世話ばっかで大変そうだけどな」
 
拓真の表情を見て、心配する必要なんてなかったなと、俺は安心した。

「そっか。だったら良かった」

「お前って突然変な事言うよな」

「なんかあったら俺に相談しろよ」

「お、おう」

拓真は眉間にシワを寄せながらも、大きく口は笑っていた。

俺は別れさせ屋で働くようになってから、浮気相手や不倫相手を除去し、家族を救ってきた。

自然の流れに逆らった作り出された方法でカップル達を別れさせ、築き上げてきた信頼、お互いを愛し合うという気持ち、積み重ねてきた感情が、金によって、誰かの差し金によって、いとも簡単に壊れてしまう場面を何度も目の当たりにした。

全て嘘っぱちだ。
 
例え誰かの差し金によって、別れを決めてしまうようなら最初からなかったものと同じなのではないか……


俺は気持ちという目に見えないあいまいなものが更に分からなくなっていた。

俺は一生独りかもしれない。

一生誰も愛することなんて出来ないのかもしれない。

拓真のように好きな女ができて子どもができて誰もが当たり前に作り出している家族を俺には作ることができないかもしれない。