「で、奥さんが旦那の携帯盗み見たら『結婚したい。来年には一緒に暮らして結婚しよう』ってメールが入ってたんだって。極めつけは『来月にでも二人で暮らす部屋を探そう』って入ってたらしいよ」

「へー」

「それ見て奥さん焦っちゃったらしくさぁ。今までは旦那が浮気してても見て見ぬフリしてたらしいんだけど、そのメール見て本気だと思ったみたいよ。捨てられるとか思ったんじゃない?子どもも二人いるらしいし」

「最悪な男だな、その男」

「うん。だけど、奥さん言えないらしいのよ、旦那に。もし言って、ケンカにでもなったらそれこそ離婚されちゃうとか言って。だからだろうね、依頼に来たのは」

エリコさんの話を聞いて、まだ会ったこともない、知らない旦那と浮気相手に怒りを感じた。


俺には全く関係ないのに。


「俺、その仕事やるわ」

「そう?」

「うん」

何故だか、人助けなんて偉そうな気持ちではないが、この壊れかけ寸前の家族を守れるなら守りたかった。

「でもこの案件けっこー難しそうなんだよねぇ」

「難しい?」

「うん、まだ調査段階だからなんとも言えないけど、奥さんの話によると旦那さんと浮気相手、本気みたいなんだよねぇ。付き合いも結構長いみたいだし結婚したいとか言ってるし。そうなるとちょっとやそっとじゃ気持ち揺らがないような気もするんだよねぇ。だから調査には時間掛けてる」

エリコさんはベッドから体を起こし、俺の腕を摑んだ。