「智也、今日も良かったよ♪」

「エリコさんに散々調教されたからね」

「フフ」
 
エリコさんは俺の腕の中で、満足気に微笑んでいた。

「ところで、店で話したことだけど。どうする?働いてみる気ある?」
 






別れさせ屋。
 
正直働くかどうするかまだ決められずにいたが、ホストは辞める気でいた。オーナーにお世話になったという恩で一ヶ月働いてきたが、一ヶ月働いた意味が果たしてあったのかすら疑問に思えていた。  

オーナーは俺が辞めると言ったことをなかったことのように、この一ヶ月触れずにいた。


俺はもう意味を見失っていた。


ホストで働くという意味。


最初は意味があった。


俺が救いを求めたた場所でもあった。


でも俺はもう気づいていた。














あの場所でおふくろの姿を求めても、おふくろはもういないということ。



いくら酒を飲んでも、朝は来るということ。




おふくろの死から三年近くが経ち、俺は救いを求めた場所からようやく離れようと決心していた。