街外れの小道を奥へと進むと、鬱蒼と木々が生い茂る森がある。そこに、古びた大きな屋敷が聳(そび)えている。

昔は大富豪の一家が住んでいたが、ある日突然一家全員が何者かに惨殺されるという悲惨な事件があった。

事件後、興味本位の肝試しで訪れた若者が次々と消えたという噂が流れ、今ではもう、ほとんど誰も立ち寄らない。

だが地元で有名な廃屋敷には時折、未だに肝試しで訪れる若者がいる。

「ーーー着いたぜ、あそこだ!」

「うわっ、屋敷なんかどうせ嘘っぱちだと思ってたけど・・・本当にあったんだ」

屋敷を見上げる、十歳かそこらの子供が五人。

厳かに聳える屋敷の外見に気圧されたように一人の少女が、隣の少女に腕を絡ませた。

「やっぱり帰らない?パパやママに知られたら怒られるよ・・・」

「何言ってんのよ、今日こそ肝試しするって、皆楽しみにしてたのよ!それに今更、引き返すつもり?」

気の強そうな少女は、毅然として腕を振り払う。その後ろで。

「・・・本当に、帰った方が・・・いいと思う」

弱々しい口調で恐る恐る声を掛ける少年。フワフワとした癖のある栗毛。無造作に伸ばされた前髪が、目元を隠している。顔にソバカスがあり、それがコンプレックスなのか、俯き気味だ。

そんな彼を小馬鹿にするように、先陣を切って歩いていた金髪の活発そうな少年が鼻で笑った。

「ハハッ!クロウの奴、ビビってやんの。それとも何、お前幽霊でも見えるわけ?」

「・・・・・・・」

クロウと呼ばれた少年は、視線を逸らして黙り込んだ。

「何だよ、見えるなら教えろよ!何の為にお前みたいな根暗な奴を連れて来たと思ってんだ?」

金髪少年の隣で茶化す、茶髪の少年。

「そういう言い方、やめなさいよ」

嗜めるように、強気な少女が言う。

「日が暮れたら大変だわ。さっさと肝試し、始めなきゃ」

行くわよ!と全員に声を掛け、皆がそれに続く。

大きな扉に鍵は掛かっておらず、小さな彼等でも開ける事が出来た。

「よし、入ろうぜ!」

やはり金髪の少年が先陣を切って、屋敷に足を踏み入れる。

茶髪の少年と強気な少女も、それに続く。

「・・・クロウ。皆とはぐれたら、それこそ大変だわ。入ろうよ」

弱気な少女がクロウの手を引いた。

クロウは気乗りしなさそうな顔で、それでも少女の手を振り解く事はなく。そっと、屋敷へと踏み入れた。

ギィィィーーーと軋む音を立て、玄関の扉がゆっくりと、彼等を飲み込んでいった。