待ち合わせをした店に10分ほど遅れて着くと、
ロイヤルブルーのワンピースを着たサキが、
窓際の席に腰掛けて、グラスにペリエを注いでいた。

「申し訳ない」

僕が店員に案内されて席に着くと、

「今日は奢ろうと思ったけどやめて、
 一番いいワインを開けようかなぁ」

と言ってサキは両手で開いたメニューを引き寄せ、
鼻から下を隠し手見せた。

桜色のエナメルが、短い爪に塗られていた。

久しぶりに会うサキはやっぱり、綺麗だった。

「まさか当日がフリーとは思わないから、
 瞳に誘われた飲み会のつもりだったんだから」

「瞳に?」

「そう、もう瞳はやぶれかぶれって感じ」

僕はメニューを見つめながら、
まったく食べたいものを決めることが出来きず、
河野の話を出すか迷った。

「だって河野くん、
 1回も連絡がないらしいの」

却下だ、と僕は思った。