「はい、メンソール」
演習を終え、
中庭に並べられたいくつかのベンチに
腰掛けていると、後ろから相沢が2箱、
僕にタバコを差し出した。
「勝ったの?」
「まーねー、
4限がなけりゃまだまだ行けたな、
あ、俺タバコ買ってくる」
相沢の通うスロット屋には、
どうやら彼の吸う銘柄が置いていないようで、
せっかくタダで手に入るはずのタバコは、
いつも僕のものになる。
気が引けて僕は、
たまに自分のタバコを切らすと、
相沢の分も買ってみたりする。
「そんなことをしたら貸しがなくなる」
と彼は嫌がって受け取ろうとしないが、
しつこく僕はそれを続けている。
なんだか、お会計をどちらが持つかで
堂々巡りをしている
サラリーマンのようだと思って
可笑しくなるけれど、
僕は案外、古風な人間なのだと思う。