「俺はあいつに知り合うまで、
 元素の中で最も軽いのは水素だって思ってたんだ」 

演習が終わると相沢が僕に声を掛けてきた。
僕は少し戸惑って、「え?」と聞き返した。

「確かに中学のとき、そう習ったんだ」

僕は河野にメールで相沢の話を書いたことを思い出した。

「河野が水素ってのは一理あるね、
 常温じゃ気体で見つけずらい、
 それに宇宙で一番、数が多い」

「遺伝子の数がか?」

相沢がポケットからタバコではなく
ケータイをとりだすと、僕に開いて見せた。

受信メール:河野

『早く掘ってこいよ、
 南米大陸の女は、情熱的で物分りがいい』

異邦の彼方でも、
河野の好きなものに変わりはないらしい。