どれだけの想いが巡っていたのか分からない。
ただ、僕と奈津美の誕生日が同じという事実だけが
そこにあって、僕は決して自分の手の届かないその
得体の知れぬ【畏れの存在】に感謝した。
僕は鼻を指でこすって笑った。
すると彼女が、
「ねえ、島田くんの花は咲いた?」
と僕のライターを手に取り、パチパチと
火をつけたりけしたりしながら言った。
「奈津美は?」
僕が言うと彼女は「まだ」と言った。
けれどそんな【嘘】など気にならないほど、
僕の心は高揚していた。
ナイフもフォークもない404教室の最前列で、
僕と奈津美はコンビニの箸で交互にケーキを食べ、
ミネラルウォーターと緑茶で祝杯を交わした。
奈津美は最後の一口を僕に食べさせてくれ、
僕たちは照れを隠すようにして色んな話をした。
ふと黙った奈津美の表情に見とれて僕は、
彼女に近づいてキスをした。
奈津美は目を閉じて僕の腕に軽く触れた。
僕が離れると彼女は「甘い」と言って笑った。
3限の終わりを知らせるベルが、
僕たちだけの教室に大きく響いていた。