そうは言っても、
奈津美が今日404教室に来る保障はない。

栄養学の講義だってそう休講にはならないだろう。

僕はペットボトルの水を飲んで、
再度ケータイを開き、サキに返信をした。

『お誘いありがとう。
 もれなく予定のない僕なので、
 仕事が終わったら連絡ください』

【誕生日をお祝いしたい】
と言ってくれていた彼女の気持ちを、
僕は元彼として断るべきか迷っていた。

円満に恋人関係を解消させようと試みた
サキの【友達でいて】という優しさに、
僕はまた甘えたのかもしれない。

突き放し続けられるほど自分は強くないと、
とっくに僕は諦めていたのかもしれない。

僕は量子力学の講義中、そんなことを考えていた。

ふと窓の外を見ると雨は止んでいて、
僕はそれ以上思考を掘り下げることをやめた。

夏から冬へと季節が移ろう身支度の季節に佇んでいても、
何かしら収穫はあるだろうと、
秋とはそんな季節なんだろうと思っていた。