人は自分の産まれた季節に親しみを覚えるよう、
DNAに命令が組み込まれているのかと考えたことがある。

僕はそれくらい【初秋】が好きだった。



空調の設備という文明の利器を必要としない季節のうち、
春は僕にとって花粉を患う鬱々な季節でしかない。

だからそれも手伝って、より秋を好む。

次第に澄んでくる空気と早くなる日暮れに誘われて、
僕の情緒は放物線を描いて豊かに膨らむ。

罪や、孤独や矛盾、後悔も、
すべてが不変の真理だと。

内臓が食物を消化するように
自然に認めることができるようになる。