見るからに酷く辛そうなタンタン麺を啜ると、
奈津美は僕のソフトクリームに手を伸ばした。
「残しておくから、後にしなよ」
僕は笑いながらそう言った。
「溶けちゃうし!
それに、これすっごく辛いの」
「物事には順序ってモノがあるわけで」
僕は意地悪くソフトクリームを
自分のほうに引き寄せ、遠ざけた。
奈津美はフンと鼻を鳴らして、【食事】に戻った。
僕が一口ごとに水を飲む奈津美を見ていると、
「よー裏切り者」
そう言って僕の隣の椅子を引きずり、
相沢が席に着いた。
僕は【裏切り者】と言われても、すぐには
喫煙所に行くと言った自分を思い出せなかった。
「電話くらい出てもらえます?
てかおまえ、それ地獄みたいな色してるな」
奈津美のタンタン麺を指差す相沢に「ごめん」と言って
ポケットからケータイを取り出し、確認すると
相沢からの着信と、メールが1件届いていた。
受信メール:サキ
『来週の誕生日、お祝いしたいんだけどな?』