ふと去年の冬のことを思い出した。

相沢とサキと3人で飲んでいたとき、
皿にひとつだけ残された
カマンベールチーズを見て相沢が言った。

「おまえがいるよ」

僕が「え?」と聞き返すとサキは
「ヒロくんこんなにクセないから」
と言ってそれを口に入れた。

すると相沢は吸っていたタバコの火を消し、

「最後に残った遠慮のかたまり、
 おまえにぴったりじゃんか」

と言った。

僕はいつもの皮肉を気にせず、
その日もモヒートを飲んでいたのを覚えている。

サキは相沢におしぼりを投げて、

「残り物には福があるんだからね」
と言って僕の腕に左手を絡めた。

「サキ嬢の彼氏が残り物なわけないって」

そう言って僕はサキの左手を解いて
彼女の腰に手を回した。