あの夜、花火のあと僕は、
千鳥足になった奈津美を部屋まで送り、
残りのビールを冷蔵庫にしまって帰った。
奈津美は部屋につくなりソファーに倒れた。
意識絶え絶えの彼女に僕は、
「鍵閉めてから寝てね」と何回も話しかけた。
白いカーテンが10数センチ開いていることに
気がつき、閉めようと窓に近づくと、
ベランダにはいくつかの植木鉢が並べられていた。
そして僕はあのサボテンが赤い花をつけ、
月明かりに照らされているのを見た。
白いカーテンを閉めて窓から離れ、
奈津美の髪をそっと撫でて玄関に向かう途中、
何かを踏んだ感触があり左足をあげた。
そこにはライターが落ちていて、
川原の土手で僕のライターを使った相沢を思い出した。