奈津美は淡い紫の地に、
白く大きな鉄砲百合の描かれた浴衣を着ていた。
短い髪の毛は全体がワックスでまとめられ、
長い前髪はセンターで分けられて、
サイドの毛と共に耳に掛けられていた。
いつもより濃く塗られたピンク色のチークが
彼女の肌を青白く見せていた。
僕たちはいつもより言葉少なく会場まで歩き、
川原の土手に座った。
奈津美はコンビニの袋を下に敷いて、
注意深く腰をかけ、
ペットボトルの水を開けた。
「向かい酒しようぜ、
おまえもどうせ昨日遅かったんだろ?」
相沢がそういって立ち上がったので僕は
「頼んだ」と言って財布を渡した。
「自分で着たの?」浴衣を見て僕が言うと
奈津美は嬉しそうに「うん」と言った。
日が落ちて、辺りは薄暗くなってきた。
湿った風が心地よく吹いていた。
残暑はまだまだ続くのだろうけれど、
明らかに夏は折り返し地点を越えていた。