昼間に見ると薄いピンクの外壁は、
予想以上に古ぼけてくすんで見えた。
客は僕たちのほかに2組、
サラリーマン風の男性とカップルがいた。
黄緑色のカーテンは窓の脇に縛られて収まり、
窓の面積すべてから光が店内に差し込んでいた。
「潮時なんじゃねーの」
サボテンを売っていた女性は見当たらず、
かわりに中年の女性が水を運んできた。
僕はボリビア風リゾットを頼み、
相沢はアサードセットという肉料理を頼んだ。
「サキは、なんて?」
「ただ、連絡とりたいって、でも」
そう言い掛けて相沢は灰皿を自分の前に寄せると、
さきほど我慢したタバコに火をつけた。
「絶対浮気してると思うって言ってた、
そうとうキレてるな」
サキには魅力を感じているけれど、
そこから好奇心や探究心のようなものは芽生えない。
だからと言って振ることもしない僕は、
長年の彼女を浮気で泣かせる河野より、
特定の彼女を作らない相沢より
卑怯なのかもしれない。