「他の女を思って彼女を抱いた翌朝にする、
 高分子液体の粘度測定結果はどうよ」

1,2限続きの実験実習を終え、
僕が荷物をまとめていると相沢が声を掛けてきた。

「残念ながら、
 夕べの演習は執り行われなくてね」

奥二重の相沢のまぶたは、
いつもに増して厚く彼の眼球を覆っていた。

「顔が、浮腫んでる」

「そうなんだよ、
 俺は昨日湯船に顔をつけたまま寝ちゃってね、
 お蔭様でこんなにふやけてしまいましたとさ」

そう言うと相沢は右手で机をなぞりながら
さっさと教室を出て行く。