「もう毎度のことだね。
 でも、仲直りしたんじゃないの?」

サキはベッドに横になってあくびをした。

「それが違うの、瞳が誰って聞いたら、
 彼女って言ったらしいの!」

「ほほう」

僕は不謹慎ながら
テンションが上がってしまった。

それを誤魔化すために立ち上がって、
ソファーに戻りメンソールに火をつけた。

「瞳をいったん帰らせて、
 夜中の3時くらいになって、
 やっとうちまで迎えに来たのよ」

確かに河野は何度も浮気をして、バレた。

けれどそのたびそれはあくまで浮気であって、
大切な【城】を崩すようなことは一度もなかった。

僕は黙って暗闇のキッチンに向かい灰皿を探した。

瞳は河野と別れる気などなく、
その【彼女】と河野がどうなったかは
分からずじまいらしい。