ふるえるケータイを取り出して、
受信メールBOXを開きながら答えた。

「だって僕がいつも座る
 他でもないその席に彼女は座ってたわけで」

受信メール:サキ
『何時ごろになるー?』


相沢は【紙ナプキン製バレリーナ】
を完成させて、残ったビールを飲み干すと、

「いいね、
 実にキャンパスライフを謳歌しているね」

と言って目線をはずした。
その目線は彼女がトイレから帰ることを僕に知らせた。
僕は返信をせずにケータイをしまった。

「さっきから思ってたんだけど、
 相沢君って、箸の持ち方がへんだよね?」

彼女は僕の向かいの席に腰掛けながら言った。

「あ?俺?そうそう育ちが悪いの」

彼女が箸を持ち、私もなの、と笑った。
すると相沢は表情一つ変えずに、

「お前も育ちが悪いんだな」と言って、
僕と彼女のグラスを確認し、追加注文を促した。


暴言にも近い発言をしたこの男を、
彼女は新しいおもちゃでも買ってもらった
子供のように笑ってみつめていた。