「おまえって
あーゆうのがタイプだったっけー」
相沢は、紙ナプキンを
裂いたり丸めたりしながら言った。
「僕はけっこう
ロマンチストなのかもしれないよ」
僕は汚れた取り皿を新しいものに変えながら
彼女がいつ、戻ってこないか気にしていた。
「おまえってさ、こう、典型的な
腰掛OLで、夢は寿退社です!みたいな
ちょっと派手めで髪はロングで縦ロール!
みたいなやつがタイプだと思ってたね」
相手の神経を逆なでする語句を選んで
意見する人間は、僕の知る限りでは
相沢の右に出るものはいないと思う。
「あながち間違ってはいないけど、
縦ロールだけは否定するよ」
「まぁキレイな顔してるけどね、
必須条件の髪が、ショートだから驚いた
しかも、ちょっと個性派だしな」
「見た目はそんなに重視してないよ、
なんていうか、状況心理的に、
彼女の雰囲気に飲み込まれた」
「ロマンチストっていうのは、
ひとめで相手の外見以外の魅力に
気づくことができる人種なのかー」