僕は映画【ショーシャンクの空に】で主人公が
脱獄する穴を何年かけて掘ったのかを考えていた。

「なんで、そんなにアルゼンチンに行きたいの。」

「サッカーだよ、サッカー。
 あとは、チェ・ゲバラかな。」

「チェ・ゲバラって、キューバの革命家じゃない。」
彼女は勝ち誇ったように言うと、
ついにその場にしゃがみこんだ。

「知ってることは認めてやるよ、
 でも彼の生まれはアルゼンチンなんだ。」
相沢はまた、タバコに火をつけた。

「僕はモヒートが好きだから、キューバ派だな。」

僕が久しぶりに発言すると
彼女は立ち上がり、
「ね!飲みに行きたい!」と言った。

相沢が僕に笑いかけ、
完全に僕の【何かいいこと】は見透かされていた。
「俺は別に構わないけど、
 こいつは【相沢】ってやつと飲みに行くらしい。」

知り合ったばかりの彼女に、
相沢の冗談が通じるはずもなく、
僕は仕方なく説明した。

「サキを断る理由にして悪かった。
 相沢くん、今日僕と飲みに行きませんか?」